【 偽りの光明に縋って 】 初出-2010.01.24

主人(人外)✕ メス犬(人間の少女) 現実逃避中の少女の話


誰よりも可愛い娘が泣き続けていた。
宥めるべき母親は傍に立ったまま、いっこうに動こうとしない。それどころか視線さえ向けないのだ。
幸造はムっとして妻に怒鳴った。
「おいっ! 何で桜を泣かせたまま突っ立っているんだ、お前は!」
初めて出来た自分の子が愛おしかった。そのわが子を妻が放ったままでいることが信じられない。
あと数年で高校に上がるとはいえ、今はまだ我が儘さえ可愛くて愛おしい子供なのだ。

イライラしながら妻に詰寄ろうとした幸造を呼ぶように、一際高い声で桜が泣き出した。
慌てて娘に駆け寄り、優しく宥めながら何気に顔を上げると、妻が娘を冷たい目で見下ろしていた。
その視線にイラついた幸造は、ギっと妻を睨んだ。だが妻は怯むどころか、逆に幸造を詰り始める。
「何よ! アンタに私を怒る資格があるっていうの? ええ? 文句があるならいつでも出て行きなさいよ!」
馬鹿にしたように横を向いたまま、一度も視線を向けることのない妻を幸造は殴りたくて堪らなかったが、拳を握ってグっと堪え、猫撫で声で話し掛けた。
「い、いやぁ。悪かった、悪かったよ。お前は毎日、遅くまで仕事してるんだからな。よし、桜は俺が部屋へ連れて行くから、お前は休むといい」
その言葉でやっと妻がこちらを向いたのだが、幸造を見る目は冷たかった。
「アンタ。わかってるんでしょうね。私は、今、アンタの借金を返す為に働いてるのよ。いい加減、腹を括りなさいよ!」
桜へと移った妻の冷たい視線の恐ろしさと、放たれた言葉の重圧が幸造に襲い掛かってくる。
そうだ。妻が言う意味は誰よりもわかっている。
これ以上、借金の返済を遅らせたら自身の身が危ないのだ。
ヤクザに狙われて生き延びることなど出来る筈もない。
その為にも・・・。

妻は必要だ。彼女は俺の持っている最後の糸。その身体で金を運んでくる。
就職活動中の妻の連れ子も捨てられない。
アイツは妻に溺愛されてるし、もうすぐ優秀な頭脳で金を稼いでくれるのは間違いなかった。
だから、俺に出来ることは、何かを売って儲けること。それしかないのだ。
ふと、十年前、我が家に不要なモノを友人に売ったことを思い出していた。
(そうだ、前にもやったじゃないか。いや、アレは妻の子だったが今回は・・・)
一瞬、幸造を躊躇わせたのは愛情なのか。けれど、次の瞬間にはそれさえも消えてしまった。
(仕方ないじゃないか。俺は、俺は、自分が一番大事なんだ)
いつしか、ヒックヒックと泣き続ける桜を俺は見下ろしていた。
その顔が恐ろしい形相をしていることを自覚しながら、それでも目を離すことが出来なかった。

▲▲▲

ねえ、聞いてくれるかしら。自分には関係ないことで、実の両親に売り飛ばされてしまった私のことを。
あれから、一体何年が経ったのかしら。
とりあえず何とか生きてはいるわ。無事とは到底言えないけれど、まあ可もなく不可もなくよ。
中学を卒業したら外国留学する予定だった私が、何故人間をやめてしまったか、その理由をね、誰かに知って欲しいの。

強面だけれど甘く優しい父と、女の自分から見ても綺麗で妖艶な母。
忙しい両親に代わって私の世話をしてくれたのは、賢くて顔もスタイルも抜群の兄。
遥か昔、もう一人、兄のような存在が居た気もするけど、三人とも知らないと言っていたのが今でも不思議。
(夢だったのかしら? でも、何故かずっと気になっているのよね)
不自由なく生活していた私には何の不安もなかったの。
昔から娘が欲しかったという父は、私のことを目の中に入れても構わないほど可愛いと言って憚らなかったし、お小遣いも母に内緒で増額してくれることも多かったから。
欲しいモノは何でも買ってくれる優しい父が大好きで、時々ほっぺたにチューしてあげてたのよ。
同じ女だからか、母は時々ヒステリックに叫ぶし、兄は冷静沈着過ぎてちょっと不気味なところもあるけど、まあ普通の家族として十分合格だった筈よ。
そうね、一つだけ不満があるとすれば、高校から海外留学したいって言ったら叱られたことかしら。
でも、私には父を泣き落としで味方にするっていう秘策があるから未来は明るかったのよ。
それが突然、砂の城が崩れるように消え去るなんて、誰も思わないじゃない?
私だけが家族から引き離される、それも実の両親に売られるなんてフザケンナって感じよね。
明るく言ってるけど、悲しいのよ一応。
ただ、もうそんな時期は乗り越えちゃったわ、色々ありすぎて。

初体験は恐ろしい大男が三人だったわ。
寂れた牧場の、水で流されていたとはいえ糞の痕が見える地面の上で犯されたのよの
衝撃と激痛、絶望だけなら良かったのに。彼らは快感を植え付けることまで成功していたのよ。
心は何もかも拒絶するように呆然としていたのに、身体は疼きに震えて股間から男たちの精液が流れ続けていたみたい。
現金を支払った男の一人が私の脚を抱え上げると、まだ腫れているマンコに突き込んできたのよ。
「おおぉおお~~~っ! おうっ、おおうっ! すっげえぇえっ、すっげえイイっ!」
早く死にたいと思っていた私を強引に目覚めさせるほどの激痛が襲ったわ。
「すげえぇ~~っ。おほぉおお~~~っ。お前の言う通りだっ、このマンコ、すっげえ拡がってるのに俺のをぎゅうぎゅう締めてきやがるぜっ!」
「おい、アンタ、追加料金払うからよ、このオンナ、置いてってくれよ」
商品の回収に来た男に、大男の一人が金をチラつかせて頼み込んでいたわ。
泣き叫んでいる私のことなんて誰も気にしていないし、散々な処女喪失よね。
そう、売る方のも買う方にも、私は商品でしかないのよ。

初日で三人相手に夜通し犯された私は、翌日から休むことなく買い手の前に置いていかれたわ。
人数? 人数なんて覚えてないわね。
数える気なんて起きないほど、次から次へと商品らしく渡されていったから。
本当なら高校一年生を楽しんでいたのにね。
もうその頃の私は、希望なんて言葉を忘れた穢れたオンナでしかなくて、生きることに必死だったのよ。
ご主人さまに引き取られるまではね。
まさか闇の世界から連れ出してくれるヒーローがいるなんて思わないじゃない。
でもね、そう思ったのは一瞬よ。
傍にいた使用人が私の代金を支払って、すぐ首に皮の首輪を取り付けたんだもの。
ああ、相手が一人に固定されただけで、凌辱は続くんだと分かったの。
連れて行かれたのは、かつて望んでいた異国の地だったけどね。
嬉しさなんて微塵もなかったわ。


ご主人さまは変わった方で、私を人間として扱ってくれるの。
何故か昼間だけだったけれど、それでも破格の扱いだと知ってるのよ。
使用人たちの恐ろしい目が私を蔑んでるし、ちょっとでも粗相をしたらご主人さまの目を盗んで叩かれるから。
こんな穢れた存在がこの屋敷に、ご主人さまの傍にいるのが嫌なんでしょうね。

毎日、規則正しい生活を心掛けているご主人さまは、私の行動にも厳しくルールを定めてくれて、時々泣きそうになることもあるわ。
犬の時は四つん這いで進んで、人間の時は洋服を着て淑やかに(!)、淑やかに歩けって言うのよ。
変じゃない? 犬の首輪を常に付けてる人間って。
おかしなことに、ご主人さまは昼間に眠りに付いては、朝と夜だけ起きて組織を動かしているご様子。まるで吸血鬼みたいね。
まぁ、その組織も私には何をやっているのかよく分からないんだけど。

数日に一度、大勢の、多分親戚の人たちが屋敷を訪れては、ご主人さまに面会を申し出ることがあるの。
何かお願いをしているようなんだけど、その都度すげなく追い返されてるのよ。
で、あまりに素っ気無いご主人さまの態度に、何度か彼らは私を罵倒しちゃったの。八つ当たりってやつね。
でもまあ、前に居た場所で毎日怒鳴られて鞭打たれてたから別に大して気にしてなかったんだけど、ご主人さまが怒っちゃったのよ。
自分以外が所有物に何かするのが気に入らないとか、そんなところかしら。
そのことがあってから、私は淑女らしく本を読んだり、音楽を聴いたり、まあ普通に人間として暮らせているの。
まさか飼われている存在で、普通の生活が送れるなんて思わないじゃない? だから本当に嬉しくて。
たとえ、昼間以外は犬として扱われても全然平気なのよ。
だって、私はご主人さまの飼い犬としてここに連れて来られたんだもの。

ほら、とご主人さま自ら渡されたクッキー。
これは、私専用に作られたクッキーらしくて、栄養がたっぷり入っているんですって。
少し考えて、私は舌を伸ばして上に乗せてもらうことにしたの。
この間は落としてしまったから、今度こそ平らに舌を伸ばしたつもりだったんだけど、斜めになってたみたいね。
ご主人さまが調整するように角度をずらして置いて下さったのよ。
ああ、良かった、これで今回は空腹で次の食事まで我慢しなくて済むわ。
ブルブルと震える身体を必死に四肢で支えながら、舌を口の中へとそっと戻していったわ。そぉっとよ。
三枚のクッキーを噛み砕き、じっくり味わうように唾で溶かすように頑張ったのよ。
でも、口の中の至るところに屑が張り付いて気持ち悪いの。
顔を歪ませてたのね、目前に座っているご主人さまが使用人に合図を出して、私の前に大きな皿が置かれたの。
綺麗な水がたっぷりと入ってね。
嬉しくてご主人さまを見上げてお礼を言うと、頷いて皿を顎で示されたわ。
「あり、ぎゃとっ、ござっ、・・・ますぅ」
口の中がモサモサしていて上手く話せなかったけれど、気にしないわ。だって喋れないんだもの。
再度お礼を言ってから、首をゆっくりと床の皿の方へと近づけたわ。犬らしく舌を伸ばしてね。

ピチャピチャとご主人さまに聞こえるようにワザと大きな音を立てて飲み続けたの。
「いい仔だ」
ご主人さまの低い声にウットリして見上げたんだけど、もうご主人さまは部屋を後にするところだったのよ。
思わず私の四肢はその姿を追おうとしたわ。
当然よね、だって私は飼い犬なんだもの。
だけど、グイっと首が絞まって、あぁ繋がれていたんだわ、と現状を思い出したのよ。
(追いたい。でも・・・)
諦めていたら、鎖を持っている使用人が私の首輪に手を掛けて、じゃらじゃらと大きな音を立てながら鎖を外そうとしているのが分かったの。
どうして、と扉の方を見たら、ご主人さまが待っていて下さったのよ。
解き放たれた私は何の迷いもなく四肢を動かすと、優しくて厳しいご主人さまの元へと歩いて行ったわ。
本当は小走りでお傍へ行きたいけど、犬として四つん這いで歩く決まりなのよ。大事なルールなの。
常にご主人さまを楽しませるという何よりも大切な仕事が与えられてるのよ、スゴイでしょ。
だから、いつものように腰を振りながら歩いたわ。
ポタポタとマンコから恥液が零れ落ちてるのを知ってたけど、そんなことはどうでもいいのよ。
ご主人さまが指を一本立てて、もっと腰を上げるよう合図をなされたから、私はより多くの恥液を溢しても叱られないの。
ああ、太腿から足首へと伝い落ちていく恥液の感触が気持ちイイわ。
何より満足そうなご主人さまの視線が私の胸を熱くさせるのよ。

予想以上に歩くことに時間を掛けてしまったのに、ご主人さまは怒らなかったの。
「気持ち良かったかい?」
そう言うと私の腰をじっくりと数回撫で回して下さったのよ。
一度だけ、マンコまで指先が伸びたのに、入り口にちょっとだけ指を突き入れてすぐに出してしまわれたの。
「やあ~~っんっ。もっ、もっとぉ~~っ。あぁっ、ご主人さまぁ~~っ」
気持ちが良くて、もっともっと触って欲しくて腰を揺らして強請ったけれど、ご主人さまは無視して歩き出されちゃったの。
それでも合わせるようにゆっくりと歩いて下さるご主人さまの優しさが嬉しくて、私は時々見上げながら進んで行ったわ。
目が合ったら、またその暖かい手で撫でてもらいたくてね。


お腹が空いたなぁ、とマンコから恥液を溢しながら私はいつものようにご主人さまの寝室で待機していたわ。
眠る前に毎日与えられる媚薬は強力で、次に薬を飲むまで私のマンコが乾くことは一日もないのよ。
最初は怖かったし恥ずかしいしで、飲むのを拒んだこともあったけど、今は飲み水の中に溶かして出されるから諦めているの。
実際、太腿を伝うゾクゾクする感触が身体中を疼かせて、淫乱になった私をより磨き上げてくれてるのだもの、ありがたく思わなきゃってね。
そんなことを考えていたら、夕食を終えられたご主人さまが迎えに来て下さったのよ。
「おいで、サクラ」
数枚のクッキーと飲み水を与えられた私は、腰をフリフリしながらご主人さまの隣を歩いて行ったわ。
人間であった頃の名前を呼ばれると、何だか涙が出そうになるけど、そろそろ感傷は捨てなきゃね。
私はもう犬なんだから。人間じゃないのに馬鹿みたいじゃない。
いつまでも望みを持つなんて。

書斎に入ると、大きなビジネスデスクには大量の決裁書が乗っていたわ。
毎日毎日、よくもまあ次から次に届けられるわねと考えていたら、同じことを考えられたのか、ご主人さまが書類の束を見て溜息を吐かれたの。
うんうん、そうよね、と思わず顔に出さないようにして同意してしまったわ。
それでも、仕事を放棄なさるご主人さまではないから。
早速、最初の一番上のものを一掴みにして中をあらため始めたの。
私はそれを確認すると、ご主人さまの座った椅子の横から強引に身体を潜らせようとしたわ。
デスク下が書斎での私の居場所になってるの。
優しいご主人さまが入りやすいように少しだけ足を避けてくれたから、急いで中に入り込んだわ。
暗くて狭いけれど、もう慣れてしまった私には安心できる空間なのよ。

デスク下で身体の位置を何とか入れ替えたら、目前にご主人さまの膨れたモノがあったの。
もう他のことなんてその瞬間、忘れたわ。当然でしょ、これが私の仕事だし喜びなんだもの。
(あぁ、大きいよぉお~~~っ)
口内に溢れ出した唾を飲み込まないようにして、舌だけを器用に使ってスラックスから膨張したモノを取り出したわ。
朝一番にあれだけ私の中に出したのに、ご主人さまのペニスは既にはち切れそうなほどに膨れていたのよ。もう私の心臓はバクバクしまくり。
嬉しいけど大き過ぎるわ、と少しだけ戸惑った後、パクっと先端からゆっくりと口に咥え込んでいったの。
口内に溜めておいた唾を塗すようにして先端と中間を唇と舌で擦るように動かし続けたわ。
ドクドクっと膨張を繰り返すペニスの動きに、ご主人さまが満足されているのが分かるから、嬉しさを表現しようと唇で舐め回したわ。レロレロって唾を塗してね。
でもやっぱり苦しくなって、んぐぅっ、と吐き出しそうになったから、一度腰を引いて舌をペニス穴に残し、唇を解放したの。
勿論、ご主人さまに怒られないうちに、もう一度その大きく膨れて美味しそうなモノに舌を絡めていったわ。

何度も何度も唾を塗して、ヌルヌルになるまでペニス全体を舐め続けたの。
どんどん膨張していくのが嬉しくて、何十回も同じ動作を繰り返していたわ。
唾だらけになって口の中が苦しくなってきたから、今度は全部吐き出してハア~っと息を吐いたのよ。
そうしたら、すぐにトントン、とご主人さまが足を踏み鳴らされたから、何度も教えられた合図に慌てた私はペニスを含み直して舌を絡めていったの。
舐めしゃぶっては抜き出し、また咥え込むのを数百回は繰り返したと思うわ。
確かに顎はガクガクと酷く疲労していたし、マンコはズキズキと疼いて私の思考をおかしくさせそうよ。
でも止めるなんて無理なのよ。だって、とっても美味しいんだもの。
ペニスの先端から出ている淫液は私の大好物になっていたし、ペニスを口内に加えて喜ばせることに生き甲斐を感じているのよ。
もう、これなしでは生きていけないの。そんな風に、ご主人さまに躾けて貰ったんだもの。
鞭も罵倒も暴力もなしで、このペニス一つで私の心と身体を淫乱な飼い犬に調教して下さったのよ。
(ああ、なんて、なんて、なんて美味しいのぉおお~~~っ)
心の赴くままに私は咽喉の奥へと膨張激しいペニスを咥え込んでは先端へと唇を滑らせ続けたわ。

数回の短い休憩の間は、ご主人さまが私を膝の上に抱き上げてペニスの上にマンコを落として下さったから、何度も何度も嬌声を上げて悦びに涙を流したの。
「サクラっ」
私のマンコを使って興奮しているご主人さまが愛おしくて、ブルブル震える太腿をその太い胴へと巻き付けていったの。
そうしたら、片方の足首を掴まれて高く掲げられたから身体が少し浮いた後、ドスンっ体重を掛けるように落とされて、マンコの奥深くへとペニスが突き込まれたのよ。
「ひぎぃいいいいいい~~~~~っ、ひっ、ひぎっ、ぎひっ、ひっ、ひぎっ、ぎいぃ~~~~っ」
「ああ、いいぞ。いい声だ、サクラ」
深く満足した声音が耳に入って来て、惑乱している筈なのに何故か胸が痛くて堪らなくなったわ。
涙がポロポロ零れたけれど、やがてそれもガクガクと激しく揺さぶられてどうでも良くなってしまったの。

深夜二時になって、ようやく最後の束をご主人さまは閉じられたの。お疲れ様です。
使用人を呼んで指示を出しながら書類を全て渡すと、時々訪れては指示を仰いでいた秘書の二人もご主人さまに挨拶して部屋を出て行ったわ。
そうなのよ。ご主人さまも私も全く気にしないから空気のような存在になっていたけど、毎日この二人は私の狂乱を見ているのよね。
ご主人さまが言うには、彼らには専属の飼い犬がいるから私が襲われる心配はないんですって。
良かったわ。もし、襲われて、しかもその事実をご主人さまに知られたら、多分きっと、じゃあ下げ渡そう、と言われてしまうのは目に見えているもの。
ご主人さまは、あまり執着を持たないらしいのよ。
「今まで犬が何匹いたか知りたいなら教えるわよ? 一度飽きたらすぐ他人に下げ渡されるんだから。ふふっ、アンタも覚悟してなさい」
私の首輪に鎖を付けて散歩させる担当だったメイドが、楽し気にそう言ってニヤニヤ見てきたのよ、今思い出しても腹が立つわ。
でもね、確かに痛いところを突かれたのよ。やっぱりそうなのね、ってね。
だってお金持ちで権力もあって、あんなに優しいのよ。
それなのに人間を犬として飼ってるってことは、やっぱり普通じゃないわ。
分かってたのにね。いつか私も捨てられるってことは。
知っていても悲しくなるものなのね。

それからどうなったかって? 勿論、そのままよ。他に道なんてないわ。
なすがまま、それだけ。捨てられるのを少しでも伸ばせたら御の字よね。
だってメソメソ泣くなんて私の趣味じゃないし、あのご主人さまに仕えているのよ。そんな暇はないわ。
今だってそうよ。この屋敷で淫乱な犬に変えられた私の全てがご主人さまを求めて喘いでいるんだもの。
(あぁ、身体中がガクガク震えて立てないわ。でも、ご主人さまの傍に行きたいっ)
激しい交わりが終わって一息付けたことで、未だ興奮冷めやらぬ身体を私は床に横たえさせてもらっていたの。
秘書と入れ替わるように私の鎖を持ったメイドが入って来るのが見えたわ。
まだ私は動けなくて、ハアハア、と荒い息を吐いては必死に呼吸を整えていたのよ。
でも、メイドの後から紅茶係や使用人が三人静々と入って来たから、そろそろ起き上がらなきゃって焦り始めたの。
大きな盥に張った水がサイドテーブルに置かれると、その傍のソファに座られたご主人さまの手にゆっくりと水が掛けられていくのよ。
綺麗に清めた後は使用人たちが丁寧に手と指を拭いて、盥と一緒に下がっていったわ。
部屋に残ったメイドと私の眼差しは多分同じものだった筈よ。
尊敬するご主人さまが長くて綺麗な指で茶器を手に取って口元に当てられるのだもの。
その喉元にうっとりと視線を向けてしまった私は、自然に身体を起こしていたわ。
いつ見ても、どこを見ても私のご主人さまは素敵、ってね。
自然と四つん這いの体勢になった私の首輪にメイドが鎖を繋げていたけど、冷たい鉄の感触も重みも気にならなかったわ。
ご主人さまの優雅さをじっくりと堪能できる機会は貴重なんだもの。

別に物欲しげに見ていた訳じゃないんだけど、ソファから立ち上がったご主人さまが私と視線を合わせるとフっと笑って下さったのよ。
その瞬間、私のマンコから恥液が流れ出て足首を伝い落ちたわ。仕方ないじゃない、感じちゃったんだもの。
そんな私の全てを見透かしているご主人さまは、鎖を持つメイドに指で合図を出すと次の場所へ移動されてしまったの。
追い掛けたくてメイドを見上げたら、彼女は私のお尻を力一杯蹴り飛ばしてきたのよ。
(ひぃぎいいいいいいいいい~~っ! 痛いっ、痛いじゃないのよぉお~~~)
涙混じりでメイドを睨もうとしたら、逆に物凄い視線で睨み付けてきたから、恥液を溢している粗相を怒っていることが分かったの。
でも、しょうがないじゃない。私は濡れて、濡れまくるように他ならぬご主人さまに躾けられたんだもの。
掃除が大変なのは分かるけど、何も蹴らなくてもいいじゃないのよ。
数ヶ月続いた調教の過程で、私はご主人さまの許可なく館内で言葉を発してはならないと教えられていたから悲鳴さえ上げられないの。
その厳禁を破ると酷いお仕置きが与えられるのよ。
何度となく破っては、媚薬漬けの状態で屋敷の外に放置されたこと聞いてくれるかしら?
ええ、そうね、私が馬鹿なのは知ってるし、だからこそ身に染みているのよ。二度と破っちゃ駄目だってね。
だから、どんなに痛くても泣きたくても声だけは我慢してるのよ。

痛みを必死に我慢して、グイグイと遠慮なく引っ張るメイドの後を追うように歩いたわ。
長い廊下を何度も曲がって辿り着いたのは、ご主人さまが自慢されている綺麗な庭よ。
夜中であろうとも、至るところに篝火が焚かれている美しい庭なの。
(あぁ、これからこの庭で、たっぷりご主人さまに可愛がってもらえるんだわ)
夜目にも白いテーブルと椅子の傍に立ち、ご主人さまが私を待っているのを見た瞬間、胸が熱くなったの。
ジクジク疼いていたマンコが締め付けられるように痛んで、淫液が粘つくモノへと変わったのが分かったわ。
(あぁ~~っ。駄目っ、駄目よっ、腰がっ、腰の動きが止められないのっ)
ご主人さまの合図を受けて歩き出したメイドの後ろから、四つん這いで歩くのは辛かったわ。
白いテーブルに乗せた私の下半身を大胆に開いて、使用人の視線と共に大好きなペニスに犯してもらえると知っていたから、心と身体が大喜びしているの。
ああ、それとも今日の趣向は、椅子に座ったご主人さまがアヌスを貫きながらマンコを太くて長い玩具で虐め抜いてくれるのかも知れないわ。
前後に入れられての行為は私の全身を快感で貫いて興奮の渦に放り込んでしまうから、早く早く、と揺れる腰を止められないまま、ご主人さまの元へと私は進んで行ったの。

長く狂おしい夜が過ぎると、ご主人さまは私のマンコからペニスを抜き出して、軽く扱いてから私の口内へと射精してくれたの。
「食事にしようか、サクラ」
ペニスを咥えて舌で綺麗に清める私の頭頂を、ご主人さまの大きな手が撫でいくのが気持ち良くて。
合図を受けたメイドが私の首輪に鎖を付けていることに気付くのが遅れてしまったの。
蹴られたことが思い出されてビクっと身体が震えたけど、私の頬をご主人さまの掌が宥めるように撫でてくれたから、もうどうでも良くなってしまったわ。
鎖を取り付けたメイドが下がっていくのを何となく目で追っていたら、昨日のメイドと違うことに気が付いたの。
(あれっ、何で違う人なんだろう? もしかして担当が替わったのかな)
怖い人だったけど、散歩係はご主人さまの近くに来れるから倍率が高いとメイドたちが騒いでいて、担当が変わることは珍しいのよ。
(親戚の人が病気になったのかな? それとも偶々、今日だけ休みなのかな)
新しい人は、鎖が伸びる限界まで下がって、ようやく立ち止まったみたい。
どこか緊張しながら私の鎖を持って立っているから、新人さんなのかもね。
(今度は優しい人だとイイな)
犬の分際で鎖を持ってくれる人は選べないけど、暴力を振るわない人だと嬉しいから。
余計なことを考えていたら、いつの間にかご主人さまの手が私から離れていたの。
でも寂しくはないのよ。
だって、その目にはちゃんと私が映っていると知っているんだもの。


ねえ、上手く伝えられたかしら。私に優しい言葉を掛けてくれたのはご主人さまだけだって。
他の使用人には無視されて、この屋敷での私は空気のような存在ってわけ。
そう。だから・・・。
私は、ご主人さまに、ご主人さまの優しさに縋り付いて生きているの。
どんな命令だって、どんなにイヤらしく恥ずかしいことだって我慢するわ。
飽きられたら、今度はもっと恐ろしい所へと売られてしまうかも知れないんだもの。
(もう二度とあんな場所には戻らないわっ。そうよ、絶対にっ!)
この身体を好き勝手に弄って遊んだくせに、涼しい顔で家族の話で盛り上がるのよ。許せる筈ないじゃないのっ!
あぁ、ごめんなさいね。少し興奮してしまったわ。
駄目よ、私ったら落ち着いて。ここは安全。ここにはまだ私の居場所があるのよ。
(大丈夫、大丈夫よ。私は頑張れる。まだ頑張れるわ)
ねえ、あなたも応援してくれるでしょう? 
私が生き残って幸せになるのを。
この先、どんな暗闇が待っていようとも、絶望なんてしないと誓うわ。
たとえ、そこが恥辱に塗れた泥地であろうとも。絶対に這い上がってみせるから。

偽りの光明だろうと、私はそれに縋って生き延びてやるわ。
だから、あなたも私と一緒に・・・。

▲▲▲

砂混じりの廃屋の一室で、薄汚れてヨレヨレの手紙を読んでいた所長がようやく顔を上げた。
眉間に寄った皺を手で揉み解す仕草に、よっぽど読むのが辛かったんだなぁ、と思っていると、
「・・・で、結局これは何が言いたいんだ?」
当然と言えば当然の疑問が所長から投げかけられた。
「さあ? 俺にもさっぱり」
上司に対して簡単すぎるかもしれないが、これ以外の答えは出せそうもなかった。
ぽい、っと投げ捨てられた手紙が床に落ちていくが、所長を咎める気にもなれない。
「まあ、一つ言えるのは、こんなエロ小説もどきでは抜けない、ってことだな。文章が稚拙で破綻してるじゃねえか」
所長の言葉は、俺が一読した後と全く同じ感想だった。
素人が書いたエロ小説さながらに、話が途中で飛んだり止まったりと一貫性がなかった。
それでも最後まで読み進めたのは、中に人身売買の話があったからだ。

表通りから一本入った道の更に奥の行き止まりにこの廃屋は立っていた。
余所者が好奇心で建物に入ってくる場合もあったが、床は砂だらけで、座る場所といったらボロボロのソファが二つあるだけの室内を見て取り、すぐに出て行くのが常だった。
勿論、そんな風にワザと放置しているのだが、時々こうして所長や俺が隠しカメラの調整や修理でやって来ることもあった。
「一応最後まで、私とお前の二人が読んだわけだが、・・・上に報告する必要はない、これでいいか?」
タバコに火を点けながら所長が面倒臭そうに確認してきたから、
「いいんじゃないっすかね、その結論で。最初は暗号とか脅迫とか、何か真面目に想像したものの、内容がこれじゃぁねえ」
俺が笑っていると、所長が床に落ちた手紙を靴底で破り始めた。
思い切りゲジゲジと捻り潰して破く姿に、そんなに腹が立ったのか、と苦笑いしてしまう。
「誰が何の目的で、どうやってあの男の元へ届けたのかは不明のままだが、・・・こんな手紙を上の偉い方たちに見せたら私の正気が疑われるからな」
細かく破れた破片が所長の靴の先端で更に小さく押し潰されていった。

非合法行為万歳の精神を持つ俺たちが所属しているのは、まさに人身売買を専門に行う組織だった。
この建物の地下にある巨大な洞窟には大部屋、小部屋、個室と色んなタイプの牢屋が多数用意されている。
ここまで大規模な敷地を持っている組織はそうはないだろう。
隠し通路がわんさかあって、出入口も全て把握している者は上層部の一握りだと言われている。
そんな地下洞窟の牢屋の中に閉じ込めている男の様子が昨夜からおかしい、と報告が上がったのが今朝のことだ。
丸坊主のガタイのいい大男だったが、そんな男を犯すのが趣味という客人に合わせて薬漬けにしてあった。
「いつもの錯乱だろう? いちいち報告しなくていい」
そう言って最初は取り合わなかった所長も、男が握り締めていた手紙の内容を教えると多少の耳を貸すことにしてくれたらしい。
「その手紙を貸せ。・・・まったくこの忙しい時に」
起きたばかりで何もしてなかったくせに、と言えない俺は黙ってその手紙を差し出していた。

この地下洞窟で飼っているのは、金額の差はあれど今後も金を稼いでくれる商品ばかりだ。
問題が起こったらすぐに上に報告する決まりは徹底されていた。
だからこそ、牢番から報告を受けた俺は、すぐに直属の上司である所長に報告した訳だが、エロ小説もどきを真面目に報告書にするのは確かに勇気がいるだろう。
「一応、身元調査票で確認したところ、確かにこの手紙と同じ家族構成で、夫婦の借金が原因で二人ともここへ送られてるし、長男も地方の成金夫婦に売り払った記録があります。次男の方は不明になってて、娘の桜は外国人が大金払って買っていったようですね」
似たような家族も牢屋の中にはいるだろうが、男の怯えたようなそれでいて本気で悲しんでいる慟哭が鬱陶しかった。
自分で愛娘を売り払ったくせに何故泣きわめくことが出来るのか。まったく図々しい男だ。
「仮にこの手紙が本物の桜という娘が出したとして、理由が分からんじゃないか」
所長の疑問は尤もだということで、二人でじっくり手紙を読んで結論を出すことになった訳だ。

牢番らを締め上げて手紙を持ち込んだ人物を捜したものの、結局分からずじまいだった。
ウオぉおおおおお~~っ、と雄叫びを上げて暴れ続けた大男は、所長の一存で別の区画に造られた地下洞窟に移されていった。
あの手紙の存在を秘匿していることで、もし万が一、将来問題が起こったとしても、自分が管理している場所には被害が来ないように取り計らったのだろう。
そしてその危惧は、ほんの二週間後に的中したのだった。


穏やかな日差しが地上に降り注いでいた。
いつものように闇の住人たちは地下洞窟で、商品を相手に調教や仕置きを行っていた。
どこから飛んで来たのか、一枚の薄いピンクの花びらがヒラヒラと漂いながら牢屋の中へと入っていった。
それから何がどうなったのか。しばらくすると不思議なことが起こった。
厳重に管理されている筈の牢屋の門が自然に開いていったのだ。
坊主頭の大男が勢いよく飛び出したかと思うと、誰に渡されたのか持っていたナイフで牢番たちを刺し殺していった。
数人が殺されて不安と恐怖が地下洞窟に蔓延した頃、またしても幾つかの牢の門が独りでに開くという怪現象が起こった。
後はもう、阿鼻叫喚の殺戮が繰り広げられていったという。
生き残った者たちは必死に救助を要請したようだが、組織は一握りの重要人物のみを救出すると黙殺することを選択した。
翌日の早朝には、入り口という入り口全てをコンクリートで外部から塗り固めてしまったのだ。
それ以降、その組織が管理する他の地域で同様の事象が起こったという報告は上がっていない。



久しぶりに昼間に起きておられる主人が、ゆったりと紅茶を飲みながら視線で尋ねて来られた。
「ご命令通り実行致しました」
問題ありません、とお伝えすると無言で頷かれてお立ちになられた。
これから一族の重鎮が来訪されるので早めに仕事を片付けられるのだろう。
数日前までは、且つては人間であったメスの飼い犬が主人の傍で仕えていたのだが、どうやら本格的に狂ってしまったようで誰かが豚小屋へと持って行ったようだ。
主人の精液をふんだんに与えられていたあのメス犬は、己の精神が正常と異常を繰り返していることに気付かないまま壊れていき、その様を観察する趣味がある主人に悦びを与える役目を担っていた。
「いつものように褒美を」
飼い犬が替わる度に、前の犬に与えられるのは、犬の本当の望み。
今回は、唯一自分を守ってくれると信じていた父親への恨みを晴らすことだった。

言葉は信用出来ない、と嘯く人間という種族。
だが、文字に記す、手紙に認めさせる手法を取ればその本心を覗かせることも多い。
隠そうとしているくせに、実に堂々とそれを示してみせるのだ。
あのメス犬の場合、読み解くのは実に簡単だった。
本文は主人との交わりをだらだらと書いているだけで文章にもなっていない。ただの繰り言だ。
前段に出て来る家族の話が一番書きたかったことなのだと分かる。
特に顕著なのが父親との親密な関係。
だからこそ裏切られた、捨てられたという思いが強く、いまだに許すことも忘れることも出来ないのだ。

メス犬が書いた手紙の内容を主人には伝えなかったが、いつものように関心も向けられなかった。
新たな飼い犬を補充する手配はもう出来ている。
そろそろ、人間ではなく同族の中から飼い犬を選択して欲しいものだ、と重鎮の方々は仰るけれど。
主人に仕える我らにとっては、同族だろうと人間だろうとどうでも良かった。
大切なのは、主人の関心を一時でも買うことの出来る存在なのだから。
次の飼い犬の名前もまた「サクラ」と名付けられるのだろうか、とふと思った。
この間捨てたメス犬は、偶然元の名前が「サクラ」だったようで、勝手に都合よく勘違いして一人で喜んでいた、と同僚が嗤っていた。
そのうち、豚小屋を見学に行くかな、なんて悪趣味なことを呟いていたようだが。
壊れたモノを見て何が楽しいのか分からないが、大して波風も立たない生活だから僅かな刺激を欲しているのだろう。

▲▲▲

夜宴の準備が始まったのか、庭の方角から賑やかな声が聞こえていた。
先日まではメス犬がいたから、子供たちを庭に出さないよう命じていたのを思い出す。
走り回っているのだろう。使用人らが必死に追い掛けているようだった。
まだまだ子供っぽいところもあったが、彼らもそろそろ自分の飼い犬を持ってもよい頃合いかもしれない。
秘書に命じて、準備だけはさせても良いだろう。

新しいメス犬が届いたら、一緒に調教させて様子を見るべきか伴侶に確認しなくては。
子供たちそれぞれの好みを訊くのが楽しみだ。
既に成人した長女は、貧弱な面相のオトコに女装させて犯すのが趣味と言い放ち、伴侶が信じられない、と騒いでいたのも懐かしい。
そんな娘にもそろそろパートナーを与えて確固たる地位を確立させなくてはならない。
今日やって来る重鎮の紹介する者の中に期待しているのだが、さてどうだろうか。
期待と言えば、私のメス犬候補がそろそろリストアップされる筈だ。
前回のメス犬は子供っぽくて、期待外れだった。
今、走り回っている子供たちより幼くて、すぐに壊れてしまった。
次はもう少し私の嗜虐嗜好を満足させてくれるメス犬を飼いたいものだ。
机の上に溜まっている書類を見ないフリで立ち上がると、私は賑やかな庭へと向かうことにした。

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