泥の底に沈む身体を [その後]


薄暗い建物の中をゆっくり進んでいく。どれほど歩いたのか、地下へ続くという階段がようやく視界に入ってきた。
ほんのりと淡い光に晒された穴は、暗黒の世界まで伸びているような錯覚を思わせたが、階段自体は新しいもののようで冷たいコンクリートで出来ていた。
「さあ、おいで。ここで旅の支度は全て終わりだよ」
ご機嫌な主人の声音に、私はオズオズと階段を下り始めた。前に立つ大きな背中に手を伸ばし、怒られないことを確認してからその右腕に縋った。
「大丈夫だ、由利香。客人の期待を高ぶらせ、かつ余所者を排除する為にこんな造りにしてあるだけだ」
「はい、ご主人さま」
主人の言葉と態度に安心した私は、自分の手と繋がる腕の温かさを確かめるように大きな背中だけを見つめて下り続けた。

私を飼い犬にしてくれた主人が会社を早期退社して二年半が過ぎていた。
退職前と同様に、屋敷の中と広い庭を使って毎日繰り返されるのは奉仕と調教。
互いに満足する充実した日々だったと思う。いいえ、勿論これからもそうに違いない。
だからこそ、主人は飼い犬である私に告げたのだ。
「たまには別の場所で奉仕させてやろう。牝犬に昇格した祝いも兼ねて旅行に連れて行ってやる」
頬を撫でられてうっとりしている最中で、しばらく意味を理解出来なかった。
「どうせなら数週間ほど、長期でコテージを契約してもいいな」
それでもネットや旅行会社で調べた話を聞かされる毎に段々とそれが現実のことなのだと実感するようになっていった。
デスクに座っている主人の足元で普段通りに膨張したモノを咥えながら、その真剣な視線を自分に向けようと必死になるほどに旅行に対する主人の熱は高かったのだ。

べろっ。べろべろっ、んちゅう。
ちゅぶっ、ちゅばっ、ちゅぶ、んちゅうっ。
見て欲しかった、この浅ましさを。そして喜びに震える嬉しさを。
ぬちゅっ、ちゅぶ、ちゅばっ。
んっ、ふぅっ、んちゅ、ちゅっ。べろりっ、べろっ、べろっ。
砲身がピクピクと動いて可愛いと思った。大好きなモノが気持ちイイと訴えている、そう分かってより一層に舌の動きを激しくしてしまう。
主人の視線はこちらに向かないけれど、その動きだけで胸がドキドキするからもうそれだけで充分だった。



予約を入れたのは、宿泊者専用の小さな森の中にある二階がある建物だという。有名なホテルが所有しており設備も警備も万全だそうだ。
「気候に合わせた道具や服を揃える必要があるな」
楽しそうな主人の言葉に頷いてみせると、さっそく朝から私の為の調教道具と衣装を揃えに街に出ようと誘われたのだった。
購入してもらったのは、歪な形の細長い玩具、先端が極端に太いお尻用のプラグ、鮮やかな青色の拘束具。
乳首とクリトリスを飾っている宝石の付け替え用なども、仔犬から成人して牝犬になった祝いのプレゼントだと主人が笑って与えてくれた。
まだ数店しか訪れていないのに、久しぶりに大勢の人混みの中を歩いたことと、洋服で素肌を隠している罪悪感に私は疲れきってしまった。
普段、秘所とお尻の穴に収まっている淫棒が今日は入っていないこともバランス感覚を狂わせているのだろう。
「ああ、忘れていたな。休むついでに少し遅くなったが昼食をやろう。さぁ、由利香」
優しい主人が肩を引き寄せ、まるで恋人のように駐車場へと連れて行ってもらえたので、興奮で失神しそうになった。

嬉しくて胸がドキドキする。そんな気持ちのままに停めていた車に乗り込むと、運転席に座った主人の股間へと唇を寄せていった。
「いただきます。ご主人さま」
べろっと自分の唇を舐めてから、ゆっくりとその凶暴な肉竿を口に含んでいった。最初は丁寧に、やがて激しく舌を動かして主人のモノを更に太く膨張させることに専念し続ける。
後頭部を撫で続ける手の動きで、主人がこの奉仕に満足しているのは分かっていた。
早く昼食を食べたい、と告げるように両手でヌルヌルの砲身を扱き上げると、ベロっと大きく舐めては涎を吸い取って舌先での奉仕を繰り返した。
やがて大量の精液と、今では美味しいと感じる尿を喉の奥に注いでもらうと、私はようやく背凭れに身体を預けることが出来た。
人混みによる疲労は消えたけれど、今度は鈍痛のような重苦しい疲労が全身を覆っている。
けれど唇は嬉しさに微笑んでいるし、眼差しが淫蕩な想いを含ませて主人を見つめているのは間違いなかった。
「クっ。たまにはこんな風に外出するのもいいな。……いつでも好きな時に触れる場所がこうして隠されていると、それはそれで痴漢の気分になる」
ワンピースを着ている私のスカート裾を捲るようにして、主人の指が中へと入っていくのが視界に映った。

パンティを穿いていない代わりに、濃い紺色のワンピースが選ばれたけれど、もし精液が飛んだら逆に白い斑点になって目立つことに気が付いた。
そんなことを考える余裕があったのも一瞬のこと。主人が悪戯を始めたのだ。
気持ちがいいのに同時にもどかしい。思考全てがピンク色に塗り替えられていくようだった。
(あぁ、弄ってぇ・・・。お願いっ、もっと、もっと大胆に掻き回してぇ・・・)
人差し指の先端が、掠めるように秘所の入口周辺を撫で回していた。時折、ヌプっと音を立てて入り込むけれど、すぐに抜き出されてはまた指の腹で撫でることを繰り返していく。
「由利香、そんな目で窓の外を見るな。私と一緒だからいいが、一人なら恥女だとドン引きされるか、最悪、通報されるだろう」
それもまた愉しいか、と主人が何かを考え始めるのをみた私は慌てて顔を横に振った。
「ゆ、由利香は、ご主人さまの傍から離れないっ。由利香の痴態は全部ご主人さまのもの・・・なのっ」
必死に懇願するしかなかった。一人にしないでっ、そんな調教や命令はしないでっ、と視線だけで訴えていく。
こんな人の多い街中に放り出されて、恥女まがいの醜態を晒すのは怖かった。
そんなことになったら、主人によって引き出された私の隠された性癖が表に出てしまうだろう。
普段は心の奥深くに隠れている痛みや恐怖に喜んで喘いでしまうマゾの気質が白日の下に。

どんなに否定しようとも、長期にわたる露出調教や連続奉仕で私は自分のマゾ性を自覚してしまっていた。
その無様さを主人が愉快な目で鑑賞される趣味をお持ちだということも知っているのだ。
でも、それは二人の間で行うからこそ幸せだと感じているのに。通報されたら主人から引き離されてしまう。いいえ、知らない者だと最悪切り捨てられるだろう。
私の想像する未来など主人はお見通しの筈だ。それなのに無言で私を見下ろしたままで、首筋に冷たい風が通った気がした。
どうしよう、どうすれば、そんな考えがグルグルと思考を埋め尽くした時。
許しを与えるように主人の長い指が、ゆっくりとヌルヌルしている秘所の中へと入ると、淫液を纏わせたまま奥へと入り込んでいった。
ぬぷりっ。ぬちゅぬちゅっ。ちゅぶっ、ぬぷっぬぷっ。
一本から二本へと指が増えると、中を拡張するように大きく開いては最奥を目指していく。
卑猥な音が車内に響き渡り、恥ずかしさと嬉しさに私は主人の首へと腕を伸ばしてその唇を強請っていた。

奉仕の後でちゃんと舌で精液を舐め取って清めたとはいえ、自分の指が主人の綺麗なスーツに皺を作っている、その事実に居た堪れない。
でももう止められない。私の心も身体も全て主人に向いているのだから。首を絞める勢いで抱き付いている、そのことに気が付いても離せないのだ。
「まだまだ甘えたがりだな、この牝犬は」
仕方ない、そう告げるような視線を焼き付けた後、私の目蓋は自然に閉じていった。

噛み付くような口付けに襲われ、嬲るような激しさで舌を絡め取られる。歯裏を舌先で擦るように舐められて気持ち良さに目の奥がチカチカした。
上の口に合わせるように卑猥な下の口の中の指の動きが激しくなっていくのが嬉しくて。
ヌプヌプと恥音が耳に届くのさえ音楽のようで、自然と腰を持ち上げて指の動きを助けていた。
「はあ、はあっ・・・。んっ、もっと、もっと虐めてっ、ご主人さまぁああああ・・・っ」
叫ぶように強請ると身体ごと運転席に抱き寄せられ、カチャカチャ、とベルトとチャックを外す音に続いてズブリっという聞きなれた音が鼓膜へ届いた。
「はあぎぃいいいい~~~っ!!」
自分のそこに主人の肉棒が突き立てられ、強引に入り込んでは引き出されるのを繰り返されて喜びの声を上げた。
やがて、私の腰を強く引き上げた主人の手がスっと放されて、秘所の粘膜が押されるように拡がると肉棒全てが埋め込まれていった。

 ▲

昼食をもらった私は、主人に腰を抱かれながらこの建物に入っていた。
最後の階段を下りると、主人の腕に縋ったまま岩石で創られたという地下の廊下を歩いていく。
古い建物を買い取って改造したオーナーが自分の女に与えた店だよ、と主人が笑う。
「お前も欲しいなら言いなさい」
優しい言葉に少し戸惑って、でもキッパリと断った。
「由利香は、ご主人さまだけを見ていたいの。欲しいのは、ご主人さまと、・・・この長くて太いペニスだけ、です」
望む時は自分の言葉としてハッキリと大胆に、時には淫乱な恥女のように卑猥な単語で強請ることを躾けられていた。
だから、主人の目を見つめながら同じ言葉を、今度は内緒話をするように耳元に囁いていく。
「可愛い牝犬だ」
頬を大きな舌でベロっと舐められてくすぐったい。ドキドキする鼓動を誤魔化すようにギュっと腕の力を強めた。

不透明なガラスで細工された重厚な扉を押し開くと、中に一人の女性が立って出迎えてくれた。
この女性がオーナーから店を任された人なのだろう。とても綺麗な人だった。
「こちらへどうぞ」
お客は全員予約制だというから名乗る必要もないようで、もしかしなくても私のサイズもすでに手元にあるに違いない。
主人へと一つ頷いた女性は、全身が見たい、と裸になることを求めて来た。
主人の唇が愉快そうに上がる。それを肯定と受け取った私は、紺色のワンピースを床へと落としていく。
パンティどころかブラさえ着けずに外を歩いて来たのがバレてしまうけれど、恥ずかしいのはその部分じゃなかった。
主人の出した精液が下半身を中心に飛び散っているし、多分ワンピースにもこびり付いている筈だ。そちらの方が何よりも恥ずかしかった。
でも、この女性は全く動じていなかったし、指摘もしなかった。ただ、じっと私の身体を冷静に見て取っただけのように感じられた。
すでに購入する品を指示されていたのか、背後の棚に回った女性は次々に品物を手に抱えて戻って来た。
「メールで頂いたサイズと変わりないので、こちらを試着して頂きます。具合を確認下さいますか」
「・・・は、はい」
顎を軽く持ち上げた主人を見ながら私は頷いていた。

最初は品数の多さに驚いたけれど、ブラとパンティ、ベビードールとガーターストッキングが数点ずつのようだった。
女性から受け取った品物を持ち、試着室を見つけようと視線で周囲を見渡していると、
「どうぞこのままで。・・・一度着用した物は焼却しますので、お気になさらずに」
「は、はい」
全裸を見せるのに抵抗は全くなかった。それは普段と何も変わらない行為。
でも、こんな風に他人も交えての着替えは初めてで、羞恥心に全身が染まっていくのが分かった。
穏やかに微笑む女性はまだ若く見えた。それなのに、この落ち着きとさり気ない優しさはどうだろう。
まるで大人の女性の抱擁のようだった。この仕事で私のようなオンナを大勢見てきただろうに、その眼差しはとても穏やかだ。
蔑むこともなく、私が汚れないか気にしているのを察して先に言葉をくれる素晴らしい女性。
彼女の持ち主は、きっとそんな優しい性質をとても気に入っているに違いない。

主人が事前に選んでくれていたのは全て高級品なのだろう。手触りの良さにウットリし、その滑らかさに思わず微笑んでいた。
試着用は全てブルーで統一され、大切な部分のみ可愛らしいフリルがスケスケ感をよりリアルにしていた。
一度に全部を着けるよう指示されて、戸惑い半分と興奮を持ちながらブラを手に取っていく。
ベビードールを頭から被って裾を整えてみると、股間がギリギリ隠れる長さしかなかった。
次に手に取ったパンティは腰紐を横で結んで前後を締めるタイプで、更に茂みと秘所の部分がメッシュになっていて恥ずかしい。
特に前部の小さなリボンには仕掛けがあって、リボンを軽く持ち上げただけで日常の荒淫により常に勃起しているクリトリスがポチっと飛び出てしまうのだ。
「は、恥ずかしいです……」
見ないで下さい、と主人の方へ視線をやるとニッコリ笑って私の正面へと歩いて来るのが分かった。

大きな掌が股間を撫でるように動き、例のリボンを人差し指で持ち上げていく。飛び出しているクリトリスに指の腹を当てると、感触を確かめるように弄り始めた。
「あ、あぁ・・・、ご、ご主人さまぁ・・・っ」
「気持ち良いようだな、購入するとしよう。だが、コレはまだ調教中だ。いつでもイケては意味がない。・・・紐付きはないのか?」
「はい、そのタイプも何種類か用意出来ます。似たデザインで宜しいでしょうか」
頷く主人と震える私を置き去りに、女性はさっさと棚の方へと歩いて行く。その淡白さに少し救われる気がした。
色違いを大量に購入した主人だったけれど、ガーターベルトには興味が持てなかったらしい。それ以外の品物を屋敷へと配達するように女性に告げていた。
「また次の機会があれば利用しよう」
「お待ちしております」
主人と女性の挨拶を聞きながら、私はワンピースを身に着けていく。支払い済みだから、と試着した下着はそのままにしてあった。

扉の外まで見送ってくれる女性に挨拶して私たちは歩き出した。いかにも秘密の店があるのに相応しい薄暗い地下通路を。
ローヒールの小さな音と、主人の皮靴のコツコツという音が階段を上ることで微妙に変化していった。
まるで今の私の淫猥な気持ちを表しているかのように。
「気持ちイイか、由利香」
「は、はい。ご主人さまぁ・・・」
例のパンティを身に着けている所為でクリトリスが紐でギュっと締められていた。歩く度にそこがメッシュ素材に触れて擦られているのがわかる。
リボンは振動で簡単に持ち上がるから隠す役に立たず、ワンピースを着ていなければ、逆に卑猥さを演出することになっただろう。
地上に出るまでずっと勃起中の粘膜がジンジンと疼いて堪らなかった。いいえ、階段を上がりきってもそれは同じこと。
今度は歩くことで下半身に力が入り、メッシュ素材でクリトリスが擦られてしまうから。
愉しそうな主人の気配が唯一の救いであり、もっと感じて、喘ぐ私を見て欲しい、と姿勢を正して歩き続けるのだった。

 ▲

私にとっては初めての外国旅行だったけれど、二週間以上過ぎた今、正直に言って普段とそう変わりないなぁ、と思っていた。
長く続いた熱帯夜もようやく明けてくれた早朝のこと。私はバルコニーで寝転んでいた。
運動しなさい、と指示されて全裸のままブリッジを繰り返した結果、疲れ果てて潰れてしまったのだ。
「いい映像が取れた。これも後で編集して調教に使うとしよう。・・・由利香がもっと牝犬として成長するように」
私の横に腰を下ろした主人が頬を掌で撫でると唇を奪ってきた。
絡み取られる舌に気を取られている間に、グチュグチュになっている秘所へと潜り込んだ太い指が無造作にそこを掻き回し始めて、同時にクリトリスを虐めるように何度も何度もギュっと潰していく。
「ふぁぐぅううう・・・っ。はっ、はぎぃ・・・っ、・・・っがあぁ・・・っ」
痛いっ、でも気持ちがイイっ。大声でそう叫びたいのに、唇が塞がれた状態では何も吐き出せなくて。
涙で曇り始めた視界に主人の顔が入ってきた。必死に見つめていると、分かっている、と言うように舌の動きが早くなった。
たっぷりと私の口内と秘所を虐めて気が済んだのだろう、ゆっくりと主人が唇を放してくれた。
勿論、秘所に入ったままの指の悪戯は止まらなかった。

外国の気候に慣れないようで、主人はこの予約した山荘から一歩も出ようとはしなかった。
旅に出た意味がないのでは、と私なんかは思うけれど連れて来てもらっただけで嬉しいから、いつもと同じように主人に引っ付いて過ごしている。
明日の午後には、飛行機に乗って飛び立っているだろう。
最後に日光浴をしよう、と二人でバルコニーに出たまでは良かったのに、またしても例の卑猥なブリッジ体操をすることになってしまった。
「さぁ、由利香。可愛くて淫猥いなお前のモノを撮ってあげよう」
主人の望みを理解した私は、乳房を揺らし、秘所とクリトリスをジンジンと疼かせながらブリッジ運動を繰り返していった。
(恥ずかしい、・・・もうっ、もう許してっ)
喘いでは駄目だと言われて必死に回数を読み上げたけれど、多分最後は適当になっていた筈だ。
疲労感と羞恥でクタクタになった私は床に寝転がってしまった。
主人はというと、ヌルヌルの秘所に手を伸ばすと大胆に掻き回しながら中を拡げて二本の指を最奥まで突き入れ始める。
喘ぎ身を捩って悦ぶ私を満足に見つめた主人は、何を思ったのか、急にわざとらしく大声を上げて命令した。
「しまったな。もう一つを撮り忘れていたよ。・・・さあ、由利香。これを入れて再チャレンジだ」
示されたのはアヌス棒で、穏やかな顔の主人は、入れてあげよう、と告げると、私に犬の恰好を取らせたのだった。

ガクガクと震える太腿、股間から見える淫猥な棒の端を見て満足されたらしい。主人は暫らく全身を眺めた後、
「ブリッジは中止だ。・・・明日の分まで弄ってやろう。来い、由利香」
優しい飼い主から支配者へと代わったことを口調で示してきた。
その傲慢なまでの視線と態度に、私の胸がズクズクと疼き始める。嬉しいと、もっと支配して下さいと訴えるように。
行きの飛行機の中で私に悪戯することが出来なかった不満を未だに持っているらしい主人が可愛いかった。
たとえ誰にバレても構わないから虐めて欲しかったけれど、主人を犯罪者にする訳にはいかない。
帰りの飛行機の中でも大人しく隣に座っていてもらわなくては。
家に戻りさえすれば、いいえ、帰りの車の中に入りさえすれば、そこはもう主人の領域で誰憚ることなく私の身体で愉しんでもらえるのだから。


今日は、この山荘を出て飛行場へと向かわなければならない。
迎えの車が三時間後には玄関に着くだろう。
支度はとっくに終えていた。というよりも、そもそも主人の着替えと私の調教道具、僅かに生き残った高級下着のみなのだ。
食事も飲み物も、洗顔ほか全てこの山荘に用意されていたので片付ける必要がなかった。

仕事関係の電話に出ている主人から離れて、私は屋上のバルコニーに向かった。
外に出てみると、まだ朝も早いというのに暑くなってきた空気が肌をチリチリと焼き始めている。
この山荘に着いた当初は、ベビードールとメッシュのパンティの色を揃えて昼間は洋服代わり、夜は淫乱な娼婦のように主人を誘う道具として使っていた。
けれども、この国の気候や食事に眉を顰める主人の苛立ちが私へと向かい、その手が伸びる度にビリビリに破られることになった。
「ご主人さまっ、・・・これっ、高いんですよっ」
自分ならどんな風に使われても、今更そう簡単には壊れないほどに私の心も身体も鍛えられていた。
それよりも気になるのは、この下着たちが高価なものだという事実。
無言で見返されてチョット焦ったけれど、主人はフンっと鼻息を出すと私の身体を引き寄せた。そうして指での悪戯を始めてしまったのだ。
一応、意見を取り入れてくれたのだろう。その日から私は屋敷と同じように全裸で過ごすことになった。
そう、だから今の私は全裸だし、持って帰る高級下着は生き残ったと言える数点のみなのだ。
「最後の日になって肌を焼くのか」
背後から掛けられた言葉に頬が緩んでしまう。少しでも姿が見えないと気になるのは私だけじゃない、そう分かるから。
嬉しさを隠すように頭を軽く振って髪を揺らしながら振り返った。

ブルンと揺れる乳房の重みと、じっとり潤んでいる秘所、勃起して飛び出ているクリトリスを主人に魅せ付けるようにして歩いていく。
まだまだ若い私の身体は、それでも成熟した桃さながらに主人に見て貰えているのだろうか。
「・・・」
「・・・・・・」
にっこり笑っている私と、無表情のまま立っている主人。無言で見つめ合う私たちはきっと同じことを考えている。
この瞬間から、また熱く激しく身体をぶつけ合い、まるで野生の交尾のような時が訪れるのだ。
主人が足を一歩踏み出した、そう思った瞬間、バンっと勢い良く石の壁に背中を押し付けられていた。
強引に片脚を持ち上げられ、無言のまま貫かれた。秘所にズンズンっと打ち込まれる杭の熱さに翻弄されていく。

何度も何度も互いの唇を強請っては舌を絡め合った。ズルっと抜き出されたモノが次の標的であるお尻の穴に当てられて、
「ひゃい、いっ・・・いぎぃいいいいいいい~~~ぃ!!」
痛くて痛くて次から次に涙が零れるのに、主人から逃げようなんて微塵も思わなかった。それどころか、もっと欲しい、と囁いてしまう。
強引にお尻の穴を貫かれ、数回の突き入れ後に強引に引き抜かれてしまった。
息が整わない間に床に座り込んだ主人に腕を取られ、引っ張られた格好で強引に膨張した杭の上に体重を乗せてしまう。
迷うように前の穴にも後ろの穴にも幾度か入り込んだソレは、やがて後ろの穴の最奥へと向かって突き立てられた。
「ひぎっ、ぎひぃぃいいいい~~~~~っ。ひっ、ひぎっ、・・・ぁっ・・・あぁ~~~っ」
それでも慣れた身体は何とか折り合いを付けようと自然に揺れ始めて、やがて私の腕は主人の首に回ると縋るように抱き付いていた。
「・・・はっ・・・由利香っ。・・・っ・・・、・・・はっ・・・っ・・・」
滅多に聞けない欲情した声が私の名前を呼んでいた。恋人に語りかけるような耳元への囁きに涙が零れる。
そんな純情な気持ちとは裏腹にズブっ、ヌプっと淫靡な音が下半身から流れ続けていた。
「脚を上げろ」
もっと大胆に脚を開いて全体重をペニスに掛けるよう命じられて、喜びの吐息が上の口から零れた。
けれど、すぐに大きなモノでお尻の穴が塞がれて嬌声を上げてしまう。
「あっ、あぎいいいいいいいいい・・・っ。あっ、あっ、あひっ、あひぃいい~~~ぃ。・・・っあ・・・」
飛び散る汗も、勃起して痛いクリトリスも、何もかも忘れてお尻の穴の存在に全てを預けた。
バルコニーの手すりが涙で曇った視界にぼんやりと映っている。ゆらゆらと、まるで蜃気楼のようだと思った。

 ▲

母を捨てた義父から飼い犬に選ばれ、そして私も喜んで所有されることを誓った。
そんな歪な関係だけれど、主人に求められ、それに応える自分が誇らしかった。
優しくて甘い所有者でも、傲慢で厳しい支配者でも、どちらでも構わない。
私のこの身体の疼きと興奮を宥めてくれる。いいえ、もっと高めてくれる主人は一人だけだから。
癒しなんて求めない。求めてはいけないのだ。
主人が選び、私もまた自ら選んだこの道は、犠牲者を出してまで掴んだ鬼畜道なのだから。

屋敷に戻った私たちは、普段と同じ生活へと戻っていた。
朝から欲情した私が主人に手を伸ばして調教を求め、昼間はひたすら奉仕を続けて、夜は娼婦のように三つの穴を杭と淫棒で塞いでもらって喜ぶのだ。
週に二日、主人が私を連れて買い物に出掛ける時には、秘所とお尻の穴に淫棒を入れるところから始まって恥じらう様子を楽しんで頂く。
それから外出用となった卑猥な高級下着を身に付けると、口内を主人の太いモノで塞がれたまま外での調教を視線で訴えるのだ。
(いつも触っていて。もっと私で愉しんでっ)
他人に知られそうな痴態と、観られているかも知れない興奮に身体は熱く疼いて堪らない。

どうしてこんな毎日を送っているのか、考えてしまう時もあった。でもそれは呼吸を二度繰り返せば消えてしまう些細な間のこと。
「おいで、由利香。イイことをしよう」
ソファに座った主人の視線に絡め取られた私は、足元に座っていた腰を伸ばすと、両腕を開いて抱き上げて欲しいと頼んだ。
今は優しい飼い主の時間だから甘えても大丈夫だと。
「成犬になった筈なのに、甘えん坊だな」
頬を緩めながら抱き上げてくれる主人の膝に座って、その太い掌が秘所を弄り始めたのに安心する。
(ああ、まだ私は飽きられていない。まだ大丈夫、ここに、主人の傍に居ていいんだ)
くちゅくちゅ、ぬぷっ、ぬぷりっ。くちっ、くちゅり。
卑猥な指の動きに私の気持ちを取られるのを嫌ってか、主人が私の顎を持ち上げて唇を寄せて来た。
嬲るような粘っこい舌の蠢きに、あれ、支配者モードに移ったのかな、と少しだけ慌てていると、下半身の弄りが更に強くなってしまった。
でも、逆らうなんてしない。嬉しいから。
優しくして、とも思わない。激しい執着心に心が満たされるから。

ここが私の居場所。これまでも、それから未来もずっと。
自ら泥の底に足を踏み入れて、更に奥へと沈んでいく。その歩みを止めることはない。
名前を呼んで優しくあやしてくれる所有者。
強引に抱き寄せて熱棒で私の体内を掻き回す支配者。
どちらも愛おしくて堪らない。
母を、親戚を、友人を、世間を捨てても欲しい人。それが目前に居る主人だから。

このまま痛みと快感にまみれて、いつか二人して消えることを祈っている。
泥のように固まって、最後は砂のようにサラサラと誰の記憶からも完全に消え去ることを。
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