【 白昼の悪夢 】 初出-2009.08.17

殺人、近親相姦(複数人)、歪んだ愛情。 


地面に横たわっているのは、濃淡の紺のワンピースを着た俺の彼女だ。
その上品なドレスの裾を無造作に捲り上げる無骨な男の指をただ黙って見ていた。
厭らしく動くその指を止めたくても出来ないこの状況に、汗が頬や首筋から流れ落ち続けている。
俺の怒りを表すようにブルブル震える手。それを必死に耐えて拳を握り締めた。
初めて真面目に付き合った女性が目前で襲われている。それも公園の繁みに連れ込まれて。
何より腹が立つことに、俺の親友に犯されようとしているのだ。
けれど、足は一歩もそこから動けなかった。
親友に500万もの借財があり、利息ですら返していなかったからだ。

はあっ、はあっと荒い息を吐いて親友の男が彼女の頬を舐めている。
それを俺は背後から睨むことしか出来ない。
愚かで不甲斐ない、どうしようもない男だ、俺は。
自分でも分かっているし、親族も知人友人もそれを知っている。
だからこそ頼める相手は親友しかいなかったのだ。
非合法の資金屋の助手で、俺の無理な頼みに頷いてくれたのは。
即日現金を用意してくれるなんて、と感謝の言葉を大盤振る舞いしたほどだ。

勿論、利息は法外だったが、俺にはきちんと返す当てがあった。
だが、肝心のその当てである父親の保険金が懐に入らなかったのだから、今思い出しても腹が立ってしまう。
びっくりした俺は家に乗り込み、母や兄に詰め寄った。
昔から家や学校で暴れまくり、ほとほと手を焼いた父親が数年前に俺を籍から抜いてしまったのだと言う。
どう押し問答しようとも結果は変わらず、俺に打つ手はなかった。
そんな時、暑さにやられて道に蹲る彼女と出会ったのだ。
焦燥感にフラフラ歩く俺を誰もが避けて通り過ぎる中、前方で女が道に蹲っていた。
苛々していたから、最初は邪魔なヤツだと心の中で罵った。
けれど、近付いていくごとに、その姿が今の自分のように思えて更に苛々してしまったのだ。
さっさと立てよ、そう自分に言い聞かせるかのように女の腕を掴んだ。
それが真実なのだが。
俺の親切が嬉しかったと彼女のほうから誘われて、有頂天になったのも仕方がないだろう。
絶望に一筋の光が見えた気がした。
・・・人生はまだ捨てたモンじゃないと。

まだ数週間の付き合いだが、良家のお嬢さんらしく清楚で繊細な女性だった。
33歳の俺と話を合わせようと、苦手なジャンルの本の話にも付き合ってくれる優しさに惹かれていった。
大きな笑い声は上げず、静かに微笑んで男をたてる、今時どこにもいない淑女。のめり込まない方が変だろう。
出来るだけ優しく接して、怖がらせないよう気を使って交際を続けていた。
粗野で乱暴、金も無く、服のセンスが悪い、と様々な商売女にハッキリ言われて敬遠されていた俺に寄り添い、身体を許してもくれた。
それなのに、俺は・・・。

20歳の誕生日を間近に控えた彼女を呼び出し、この公園へと連れて来たのは俺だ。
そう、借金の返済のカタとして。
俺に手を伸ばし必死に助けを求める彼女に、俺は目を合わせられなかった。
下品な笑い声の親友が彼女の唇を強引に奪い、濡れた音を辺りに響かせる。
ばたばたと足を動かし、逃げようと足掻く彼女の脚が白くて眩しかった。
その白さに煽られてなのか、それとも自分のモノを親友に与える愚かさに気付いたのか、俺の身体は抑えるのが難しいほどにブルブルと激しく震えていった。
(どうしてこんな男にっ。そうだっ、どうしてこんな男に彼女を奪われなければならないっ)
俺は周りを急いで伺うと、誰も居ないことを確かめて大きな石を手に持った。



夜明けと同時に部屋を出て、自分の部屋へと戻った。
身体は疲労困憊で、倒れこんだベッドから一ミリも動けない。
けれども、私の身体は小刻みな動きを続けていた。
たった今、相手をしてきた男が差し込んだ玩具の刺激を受けて。
この家の娘として産まれ、可愛がられてきた。そう信じていた。
箱入り娘だから嫁にはやれん、と常々父は周囲に笑って話していたくらいに。
二人の兄も苦笑しつつ頷いて、優しく私に笑い掛けてくれた。
母は早くに亡くなっていたけれど、父に再婚の意思はないと言う。
「じゃあ、私がお母さんの代わりに、ずっとお父さんの傍にいてあげる」
笑って告げた少女は、もう何処にもいない。
そう、それは過去の遺物。
私に残された幸せな記憶だ。

あの夏、一人の男性と出会った。
他の誰とも違う荒っぽさと、それでも私には丁寧に接してくれる態度が新鮮で彼にのめり込んでいった。
交際一ヶ月まで数日という或る日、彼から連絡が来た。
「会いたい」
その言葉に喜び、勇んで会いに行った公園。
だけどそこに居たのは、彼と・・・目付きの鋭い男だった。
粘っこい視線が私を貫いてきた。
気持ち悪くて怯えて後ずさる私を、その男が繁みの奥へ引きずり込もうとしていく。
何が起こるのかなんて、奥手の私にも分かった。
(うそっ、うそよ! こんなっ、こんなことが私の身にっ・・・)
手を伸ばして彼を呼んだ。
けれど、応えは一向に訪れようとしなかった。
必死に抵抗し、何度か男の頬を叩いた。それでもパンティの中に男の節くれた指が入ってくる。
「いやあああ~~~~!」
悲鳴を上げた瞬間、ドカっと鈍い音が聞こえて男が私に倒れ込んできた。
「ひぃいいいいい~~~~っ!!」
ピクリとも動かない男を乗せたまま後ずさる私を、彼が虚ろな目で見ていた。
手に大きな石を持ったままで・・・。

あの後、彼は私に手伝わせて死体の男をその場に埋めてしまった。
事件を無かったことにする為だと言い聞かせて。
そこまで思い出した私は、ブンブンと頭を振った。
その後の出来事は絶対に思い出したくなかったからだ。
(あれは、夢。・・・そう、悪い夢。彼は私を裏切ってなんかいないっ!)
共犯者となってしまった私に後ろめたさを覚えているだけ、いつか絶対に私を迎えに来てくれると信じている。
今の彼は、ただ・・・。
あの男を殺した自分を責めて、私と距離を取っているだけなのだから。

そう、私は待っているのだ。
どんなに家族が彼は迎えに来ないと言ったとしても、信じて彼を待ち続けると決めていた。
迎えに来てくれるまでの間、私はここで罰を受けている、それだけのことだと。
(男をあそこへ埋めたこと。そして彼が・・・)
ギュっと目を瞑り、眠らなければと暗示を掛けた。
明日も私の一日はハードなのだから。少しでも身体を休めなければならない。
タオルケットを首筋まで引き上げた途端、意識が遠のいていくのを感じた。


眠っている妹を抱き上げ、風呂場へと連れて行った。
前日の疲れのせいで、お湯を掛けても目を覚まさない。
綺麗に身体を洗っていると、ようやく気付いたのか目を開けて悲鳴を上げた。
「いやぁああああ~~~~っ。ぃやっ、兄さまっ、いやですっ! ・・・手をっ・・・」
身を捩って逃げようとする妹の肌の白さに改めて感心するしかない。
湯気の中にほんのり浮かぶ白く若々しい肌。
その肌の至るところに三人の男の痕が付いていた。
まるで、この身体の所有権を主張するかのように。
その痕に目を眇めつつ、吸い寄せられたように妹の背中に口付けて舌を這わせていった。
一瞬ピキっと固まった身体が、やがて愛撫に蕩けて弛緩していくのが分かった。
胸の膨らみに背後から手を回し、ゆったりと揉んでいく。
「あはぁああんん! ・・・あんっ、ああんっ!」 
妹が気持ち良さげに喘ぎ出すと、俺の興奮もどんどん高まって下半身が燃えるように熱くなっていった。
暫らく揉み続けて妹の抵抗を完全になくすと、俺の胡坐の上に乗せてやった。
「ひぃあっ! ぃやああんんっ! んんん~~っ」
嬌声を上げた妹の背中には、激しく勃起し先端から零れる先走りが当たっていた。
嫌がる言葉と裏腹に、妹はそれを背中に擦り付けるように動かし始める。
無意識に、だがその動きは激しかった。
ここまでセックスにのめり込ませるのは大変だった。
かなり時間は掛かったものの、今ではそれも良い思い出と言えるだろう。

近親相姦。それも父親と兄二人の相手をさせられるのだ。そう簡単に素直に身体を開かくわけがない。
けれど、俺たちは妹を縛る秘密の言葉を持っていた。
妹が初めて愛し、守りたいと思った男。あの屑男が起こした事件を黙っていてやるという、秘密の言葉を。
妹はまだ、あんな愚かな男を好きなのだ。
思い出すだけで腹立たしくて堪らなかった。
本来ならば妹を警察に連れて行くのが正しいのは分かっている。
だが、罪に怯えて記憶の混同をきたしている妹に対して、俺たち三人は脅迫する方を選んでしまったのだ。
愚かにも、自分たちの長年の欲望を満たすチャンスに喜び、それを実行することを。

優しくて繊細で、それでいて淫乱だった母。
夫や息子二人と身体を繋げる時には、
「さあ、来て」
普段の優しい母とはまるで違う声で招き寄せ、柔らかい乳房を差し出してくれた。
妖しい容貌に魅せられた三人は、その度にただの男に変えられてしまったのだ。
いつ呼んでくれるのか期待は高まり、呼ばれるたびに胸をドクドクさせながら家中で交じわりあった。
ああ、あの日々が懐かしい。
母が心臓発作で逝ったあと、誰の胸にもポッカリと大きな穴が開いたのは仕方がなかった。
当然だ、三人にとって最愛のオンナが目前から消えたのだから。

無邪気な妹の笑顔でさえ、その穴を塞ぐことは出来ず苛々する日々は長く続いた。
何年も経ったある日、家で寛ぐ父と弟の視線に気付いた俺はギョっとした。
妹の身体を舐めるように見つめるその目は、俺と同じ感情を抱いていると確信出来たからだ。
いつか必ず、そう近いうちに俺のオンナにしよう、そう決めていたというのに。
この気持ちは誰にも止められない。
最愛のオンナと良く似た顔の妹が家の中に、自分の傍にいるのだ。
誰だって同じ考えを持つだろう。
だから・・・。
あの日は、俺たち三人にとって運命の日となったのだ。

携帯で助けを呼ぶ妹の悲痛な叫びを聞いて、家族皆で車を向かわせた。
真っ赤な血を身体中に浴び、呆然と携帯電話を握ったままの妹がそこに居た。
その姿を見た瞬間、俺たちは血を垂れ流して死んでいる30代の男を置き去りにすることを躊躇わなかった。
一刻も早く、先ずは妹を家に連れ帰らねば。そう考えて実行していった。

家に着くと、真っ先に風呂場まで抱えて行き床にそっと下していく。
無抵抗な妹の視線は何も見てはいなかった。
唇が少しだけ開いていて、赤い舌が見えた。まるで、そう誘うようにその唇が震えていたのだ。
次の瞬間、一切抵抗しない妹に同時に襲い掛かった俺たちは、野獣のようにかつて妹だったオンナを犯していた。
男の死体を見ただけでも異常なことなのに、妹の身体にその血が大量に付いていたことが俺たちの心の均衡を崩したのだろうか。
今なら、そんな風に色々と理由を後付けすることも出来るだろう。
だが結局は、母と交わって悦んだ俺たちは元々野獣なのだ。
その血を継いでいる妹を自分たちの元へ引き摺り堕として、その身体を貪りたかっただけに違いない。

罪の償いなのか、ただ何も考えたくなかったのか。
妹は快楽に従順で、俺たちを獣に仕立て上げるかのように脚を、穴を自分から拡いていった。
俺たちを見ようともせず、涙を流しながら。
早朝を待ち、眠るように気絶した妹を家に置いて、三人であの男を自殺に見せかける為の工作を施した。
借金の返済を巡って人を殺してしまい、その罪に耐えかねたとの筋書きで。
最初に殺された男は掘り出して、別の場所へと移動させた。
「同じ場所にこの男を埋めるのはマズイ」
父のこの言葉は正しかったようだ。
別の場所に其々を埋めたおかげで、警察は未だ発見していなかった。
妹を襲った男と、妹の愛した愚かな男を。

油断は出来ないが今はまだ安心出来そうだ。
俺は考えるのを止めようと一度目を伏せてから目前の熟れた身体に集中した。
ムンムンと淫気を漂わせる妹は、立派な牝になっていた。あの母のように・・・。
腰を掴んで持ち上げ、凶器に突き落としていく。
「ぃぎゃあああああ~~~っ! はぎっ、ひいっ、ひぎぃっ・・・、ひいぎいぃ~~~!」
何度も奥まで貫いては嬌声を上げさせてやった。
(いい声だ。あぁ、まるでいつかの母の声のよう・・・)
俺は、うっとりと妹の声を、いや、母の声を聴き続けた。


娘の膣口を指で弄り、悲鳴を上げる唇を奪った。
ぷっくりと膨らみ、何度舐めても飽きない心地良さに目を細める。
尻穴を激しく勃起したペニスで貫いて逃げ出せないようにしていた。
けれど、もうそんな事をする必要もないらしく、娘はもっと奥に杭を押し込もうと自分で腰を揺らし続けている。
あの妻と同じ美貌で、同じく淫乱な性を開花させた娘。
今では家族全員をその身体で虜にするべく、脚を開いて甘い声で誘ってくるほどだ。
息子二人は、会社に行っている間に私に取られていないかと疑心暗鬼になっているようで、戻ってくれば必ず娘を身体検査していた。
ねっとりと嬲るように乳房を揉み込み、膣に指を突っ込んでザーメンを掻き出すのだ。
そうやって喘がせた後は風呂場に連れ込み、甘い、いや妖しく爛れた声を上げさせていた。
私は日中を娘と二人きりで過ごしているから、多少の遊びは許そうと穏やかな気持ちでいることが出来る。
かつて、妻の、いや私の唯一のオンナと過ごした日々がもう一度訪れたようだった。

グリュっと指を膣内で回し、娘の身体がビクビクっと跳ねるのを愉しんだ。
同時に舌をきつく絡め取ると私の唾を大量に飲ませてやった。
(さあ、そろそろ尻穴にもマンコと同じようにザーメンを注ぐとしようか)
差し込んだ舌で唾を咽喉の奥へと流し込みながら、娘の熟れた身体を大きく突き上げた。
「あああん、んんっ! イクっ、イクうっ・・・! ああ、イキたぁ・・・、ひっ、ひぃ、ひぃ、いひいいぃ~~~っ」
急いで注がれている唾を飲み込み、私の舌を強引に吐き出すと娘が身体をビクビクと震わせて背中を反り返した。
感じて堪らないのだろう、恍惚とした表情の娘に少しだけ意地悪な気持ちが湧き上がった。
イキそうな尻穴からペニスをゆっくりと抜き出すと途中で止めてみることにした。
娘のイキたい、という言葉に薄く笑うと、焦らすように一度だけペニスを尻穴に突き刺して、すぐに引き抜いてやった。
恨めしそうな顔をする娘にニヤっと笑って見せると、胸を突き出すようにして続きを促してきた。
もうセックスに全ての意識を奪われてしまったのか羞恥心さえなくなっているようだった。
(どら、ザーメンを注ぐ前に一度可愛いイキ様を見せてもらおうか)
どうにかしてペニスを元の場所に戻そうと腰を振り出した淫乱な娘の姿に微笑むと、望み通りにペニスを最奥まで突き入れてやった。
「ひゅぎぃいいいいいいいいいいい~~~~~っ」
痛みに泣き叫びながらも、精を吐き出して欲しいと懇願するように私の指を膣内で締め付けてきた。
それは、一匹の牝の悦びの咆哮。
愛したオンナと同じ淫乱な牝になった証であり、ようやく私に相応しい相手になったと言えた。
疼く身体を震わしながら、常に私を魅了する牝の耳元にそっと囁いてやった。
「イキなさい」
その命令に、じっくりと調教されてきた牝は激しく身体を震わせると、髪を振り乱しながらイクのだった。

最愛のオンナが可愛い淫乱な牝になったことに満足した私は、指を三本に増やして膣内を激しく動かしてやった。
一度ザーメンを注いだ所為か、そこはヌルヌルと指を絡め取りながらも簡単に回すことが出来た。
「ぁぎぃいいいいい~~っ! ひぁっ、あっ、あぎっ、あぎぃいいいい~~~~っ!」
綺麗で清楚な私の妻。同時に、奔放で淫乱な私の唯一の牝をようやくこの手に取り戻したのだ。
(この身体は私のモノだ。息子二人には渡さない!)
嬉しいのだろう、悦ぶ牝の顔を見つめながら私は決心していた。
今度こそ誰にも渡さない。私だけのモノにしてみせよう、と。



朝は兄に取られたから今夜は俺の番だと、仕事を早めに切り上げて家に戻ってきていた。
普段通りに玄関を開けると不気味な沈黙に包まれて不審を抱いた。
最近の我が家は常に誰かしら妹を犯しており、その嬌声が響き渡っているのが当然だからだ。
「お父さん? ・・・兄貴? 居ないのか?」
玄関の鍵は俺が開けたが、これはいつものことだった。
もし出掛けていたとしても、連絡がない限り俺には分からない。
廊下、居間、台所。父の書斎に、兄の部屋、一応俺の部屋も覗いてみた。
最後に、風呂場へと足を向けた。
もしかして三人で入っているのかも知れない、そう考えたのだ。

確かに、その場所に三人は居た。
最初に視線に捉えたのは妹の姿だ。
血だらけで、呆然と・・・浴槽を見ているのが分かった。
(何で血が、いや、それより何を見ているんだ)
急いで視線の先を確かめる。
そこには、浴槽の中には折り重なって冷たくなっている父と兄の姿があった。
手には、互いを傷つけたであろう包丁を其々が握っていた。

俺はこの光景にショックを受けた。当然だろう。
だがそれは常識と掛け離れた理由だ。
「何てこった! ・・・先を越されるなんて。だが、待てよ、・・・あぁ、あぁ、そうだ。これこそ理想じゃないか」
自分が恐ろしい言葉を呟いている自覚はあった。
「邪魔者が二人同時に死んだんだぞ。それも互いの手で」
それでも、恐ろしい企みに思考を乗っ取られた俺にそれを止める術はなかった。
妹をそのまま浴室に残して、警察に電話を掛けるとその到着を待った。
中々来なくて苛ついたものの、その間も妹には指一本触らなかった。
怪我をしていないことは確認出来たし、その精神が壊れていることも目を見れば分かったからだ。
以前の虚ろな目とはまるで違う、別の世界に飛んでしまったようなそれ。
これから行うことは、妹の精神状態が重要であり、俺がこの凶行に一切関知していないことが鍵となるのだ。
誰にも邪魔の入らない二人だけの世界。夢のような現実を俺はこの手にしてみせる。

悲劇の一家。亡き母の幻影に心奪われ、狂った親子の凶行。
「うそっ、だろう・・・。冗談じゃ、冗談じゃなかったのかよっ。実の娘っ、家族じゃないかっ!!」
驚きと悲しみで思わず口走った俺の言葉(嘘)に、警察も世間も疑いの目を向けなかった。
俺の帰宅時間は簡単に証明されたし、何より妹の身体には無数の性行為の痕や精液が残っていたからだ。
母親と間違われて陵辱された上に、危うく殺されかけた妹に世間の同情は集まった。
もう二度と、その清らかな精神が戻らないと知ったら尚更に。
差し伸べられる親戚の手を拒み、俺は妹を連れて山深い場所に建つ家へと移った。
妹の療養に最適な場所だからと。

今、俺は世界で一番幸せな男だと実感しているところだ。
綺麗な母と睦み合い愉しんでいると、常に横取りしてきた邪魔な二人は、もうこの世には居ないのだ。
「お前にはまだ早い」
「あと二年は待ってろ」
俺の大好きな甘い唇も、顔を埋めると好い香りのする胸も、止めどなく淫液が溢れ出ては俺を誘う秘所も全て。
あの二人によって押し退けられてきた。
だが、奴らは消えた。それも完全に。
この淫らな牝は俺だけの母になるのだ。
「あぁんっ! あんっ。はあぅ~~っ、ああぁ、いいぃ~~っ、いぃよぉおお~~~~っ」
スラリと長く伸びた脚を俺の腰に絡ませながら牝が喘ぎ続ける。
その身体には、今、俺の痕しか残っていなかった。
花びらのように紅いそれを指でなぞり、やっと取り戻したぞと俺は嗤った。


彼が私の前で楽しそうに笑っている。
その笑顔が、それを見ることが出来る幸せが嬉しい。
私は、ひしっと彼にしがみ付いていた。
(良かった。彼は変わってはいない。私の好きな彼のままだわ)
きっと、あの日の出来事は私の夢の産物なんだ。あぁ、良かった。
それなのにどうしてだろう、彼が私を軽く押し戻すと身体を離そうとする。
私は顔を歪めて目をギュっと瞑った。
(やだっ、・・・どうしてっ! お願い、私を捨てないでっ・・・、あの日のように、私を邪険にしないでっ!)
悲しくて、寂しくて。
胸が痛んで堪らなかった。
(いやっ、いやぁっ・・・。いっちゃ、やだぁああああ~~~!)

行かないで、そう叫ぶ代わりに必死に腕を伸ばしていく。
「どうした?」
彼が私に問い掛けたような気がして、滲んだ涙をそのままにそっと目を開けてみた。
そこにはちゃんと彼が居た。
ぼんやりとした輪郭だけれど、確かにそこに彼が居るのが分かった。
(あの日とは違う。良かったぁ)
そう、そうだよね。だってアレは私の夢。二度と見ない夢だもの。

彼が私の両脚を掴むと開いていく。
(うん、いいよ。分かってる、分かってるよ。こうやって私の身体を綺麗にしてくれるんだよね)
この身体に刻み込まれた穢れを、あんな厭らしい男たちに陵辱された私の心を、彼のモノが綺麗に浄化してくれるんだと思った。
(・・・男たち? 何言ってるんだろう、私。ごめんなさい、オカシイね、私)
さあ、どうぞ。私の中に入って・・・。
穢れた私を、貴方のモノで綺麗にして。
彼の手を煩わせないよう、自分から脚を大きく開いてラビアに指を掛けた。
(あぁ、お願い! 注いでっ。私の中いっぱいに貴方をちょうだいっ!)
何故かボンヤリとしか見えない彼の顔。声もいつもより不明瞭な気がする。
けれど、私はそれでいい。
ただ貴方がここにいる。それだけで・・・。


数年後、とある公園で男の死体が発見された。
地中深く埋められていた場所が雨で削られ、指が突き出ていたのだ。
その犯人として指名手配されたのは、男から金を借りた親友だった。
だが、その親友の男もまた、別の場所で死んでいるのが発見されてしまう。
人気のない竹林での自殺だった。
警察は、頭を数箇所、自分で石に打ち付けての自殺と発表。
その事件は全国紙の片隅に小さく掲載され、やがて誰からも忘れ去られていった。
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